ピルの認可が遅れている日本

一般的な避妊ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2つの種類の女性ホルモンが配合された錠剤で、海外では1970年代からすでに流通して、多くの女性たちを望まない妊娠から救ってきましたが、日本国内で避妊用として低用量ピルと呼ばれる製品が解禁されたのは、そこから約30年も遅れた1999年のことになります。
医薬品を日本国内で流通させようとする場合には、治験などによって効能や安全性がたしかに保障されていることを製造メーカーが明らかにした上で、厚生労働省に申請を行います。これが厚生労働省で慎重に審査され、だいたい1年から2年程度で認可が下りて、晴れて販売することができるようになります。
ところが、避妊ピルについては、申請された時期に国内でエイズ(HIV感染症)が拡大する傾向があり、これを認可することで、無防備に性行為を行う若い人たちが増え、エイズの被害がかえって拡大するおそれがあるのではないかという慎重論が根強くみられました。このため、申請自体はすでに1990年に製薬メーカー各社から行われていたのですが、認可までは長い歳月が必要となってしまいました。
妊娠を緊急に回避するため緊急避妊薬についても同様であり、これまでは緊急避妊薬として専用で使える医薬品がなかったため、一般的な避妊ピルを通常の用量を超えて複数回投与するという方法によって対応していました。その後、フランスで黄体ホルモン単体の配合製剤として緊急避妊薬の販売が開始され、わが国でもこの緊急避妊薬について厚生労働省への申請が行われましたが、医薬品の認可に関しては異例ともされる、一般国民から意見を求めるパブリックコメントを経た上で、ようやく2011年になってはじめて国内での製造販売が許されることになりました。なお、その際のパブリックコメントでは、性的暴力の被害を受けた女性を守るために認可が必要という意見がもっとも多くみられました。